長期修繕計画 (2)

まず、長期修繕計画の見直しについては、常識にとらわれない「天の邪鬼」的な発想も必要となります。

長期修繕計画を立てる上で大前提となる「10年から12年で大規模修繕」ということさえも疑ってみる必要があるのです。 新築時の外壁や防水などの仕様や施工のレベル、日々の管理や立地条件によって建物の劣化状況は大きく変わります。 極端な話ですが、新築時のコンクリート工事の施行レベルや品質が低ければ早い段階で外壁にクラックが発生しコンクリートの中性化が進み内部の鉄筋が腐食して強度が低下してしまうということもありますし、海風の影響がある立地で通常の塗装であれば錆びるのは当たり前なのです。 また、外壁がタイルの場合も施行方法やタイルの裏足の形状など様々な要素で剥離する可能性にも違いが出てきます。

たとえば、よく耳にする白華現象(エフロレッセンス)ですが、見た目の問題はあるものの一般的にそれだけでコンクリート強度に大きく影響することはなく、コンクリートの建築物ではある程度避けられないものなのです。 また、大規模修繕というと建物の周囲を足場で囲みシートで覆うのが一般的ですが、足場を使わずに施行する方法もあります。足場を使わなければ、その分工期が短くなりますし費用も安くなる等様々なメリットもあるのです。

屋上などの防水についても、耐用年数は様々で一概に何年たったので改修が必要とは言えないのです。 実際に雨漏りが発生するまで放置するのは論外ですが、防水の状態を定期的に点検することで、適切な改修時期を見極めることが出来ます。

外壁等のクラック(ひび割れ)も、コンクリート建築物の場合は、多少は発生するものです。 クラックが建物のどの部分に発生しているのか、また、どの程度の隙間ができているかにより状況も改修方法も違ってきます。雨水が浸透して内部の鉄筋を腐食して、錆が出ているような場合は重症ですから大規模修繕を待たずに早めに補修する必要があるかもしれません。ただ、通常のひび割れは収縮亀裂の場合が多く深く大きな隙間が生じていなければそれほど緊急性はないと言えます。

つまり、大規模修繕ということで一度に全て改修工事を行うことが必要なのかを判断しなければならないということです。

一度に済ませると、工事を分ける場合より仮設工事費などのコストが低くなるなどメリットはありますが、無駄な工事まですることになる費用の増加の方が大きい場合があるのです。 実際には、それらを判断するには専門的な知識が必要なる場合もありますので、簡単ではないかもしれませんが、時期をずらすこともできるということを知っているか知らないかでコンサルタント会社を使う場合でも違いが出てくると思います。

もう一点、保証という言葉に惑わされないことです。 「防水工事は10年保証」等というのはよく聞きますが、改修工事の際などに、「保証が効かなくなります」という脅し文句で必要のない工事をやらないことです。

建築は、専門知識が必要なことは否定しませんが、素人だからといって全く分からないというものではありません。 多くのマンションは鉄筋コンクリートか鉄骨鉄筋コンクリートでラーメン構造という柱と梁を構造体としています。極端な話ですが、その他の壁にひび割れが起きたとしても建物が崩壊することはまずありません。 コンクリートの表面に塗装したりタイルや石を張ったりして保護したり装飾しているだけと考えればいいのです。 給排水衛生設備や電気設備などはやや難しそうですが、様々な材質のパイプやケーブルがつながっているだけと思えば良いのです。

つまり、建築は難しくないのです。

長期修繕計画の中で大きな支出となる大規模修繕について、「素人にはわからないので」という姿勢ではなく、分かる努力をすることが大切です。

(2010/10/05)

前回の長期修繕計画レポート


関連資料(ダウンロード)

(様式第1号) マンションの建物・設備の概要等 (エクセルファイル)

(様式第2号)調査・診断の概要 (エクセルファイル)

(様式第3-2号)推定修繕工事項目、修繕周期等の設定内容 (エクセルファイル)

(様式第4-1号)長期修繕計画総括表 (エクセルファイル)

(様式第4-3号)長期修繕計画表(推定修繕工事項目(小項目)別、年度別) (エクセルファイル)