マンション管理会社の評価について
マンション管理会社の話というと、大体が管理費の削減や管理会社の変更などといったマンション管理会社が性悪であるという前提にたったものが多い気がします。
確かに、マンション管理会社も営利企業であり、利益が確保できない仕事はしないので、そのように映るのも無理はないかもしれません。
しかし、そのことでマンション管理会社のほとんどが性悪だとと考えるのは、いささか早計と言わざるを得ません。
マンション管理会社も様々で非常にレベルの高いサービスを提供しているところもあるのです。
ただ、マンション管理組合とマンション管理会社との関係は特殊です。
顧客であるマンション管理組合が積み立てている金額と、大規模修繕などの工事スケジュールをマンション管理会社が把握しているのです。
一般的なビジネスで、お客様がいくら持っていて、いつ買おうとしているかを正確に把握することは不可能です。
そのため仮に、悪徳なマンション管理会社であれば、素人集団である理事会を巧みに誘導して積み立てたお金を計画通り(場合によってはそれ以上)使わせることもできてしまいます。
さらに毎月マンション管理会社に支払われる管理費は、マンション管理会社にとっては確実に売上計上できる安定固定収入です。
その管理費の中で管理委託契約書に定めた業務を行う経費を差し引いたものがマンション管理会社の利益ですから、利益を多く出そうとすれば経費を削減することになるのです。
実際のところ、マンション管理会社の業務は、手を抜こうと思えばいくらでも手を抜くことができます。
国土交通省が公開している「マンション標準管理委託契約書」ならびに「別表」にはかなり詳細に業務の内容が記載されているように見えますが、実はそうでもないのです。
たとえば「別表3」の3項に「日常清掃及び特別清掃は、通常要すると認められる範囲及び時間において作業する」とあります。
仮に清掃が行き届いていないと感じて管理組合からクレームを出したとしても、規定された回数の清掃をしていればどうすることもできないのです。
実際には、規定された回数の清掃をしているとしても、「四角い庭を丸く掃く」ような管理員もいるわけです。
小さなゴミにも気が付く管理員もいれば、まったく気づかない管理員、気がついでも気が付かないふりをする管理員もいるわけです。
さらに問題なのは、清掃業務をマンション管理組合の担当理事がその都度立ち会ってチェックできないことです。
報告書に既定の回数で業務を行ったと記載されていれば、それを信じるしかないのです。
報告書に載っていない集会室のトイレなど普段あまり使われていないような場所が全く清掃されていないということもあるので注意が必要です。
清掃業務だけではありません。
たとえば、日常点検で一日に何度か館内巡回点検があるとします。
巡回経路が定められていることは、ほとんどないと思いますので、管理員が適当に館内を巡回していれば、巡回点検をしたことになってしまいます。
図面上に巡回経路を記載し、チェックする内容まで詳細に決めておかなければ、管理員次第で巡回点検の内容に大きく差が出てしまうのです。
設備点検なども同じで素人が立ち会ってもわからないことがたくさんあるのです。
また、もう一つの問題が、マンション管理会社の提供するサービスをどう感じるかは住民一人一人が違うことです。
管理員の対応に満足する住民もいれば、何かとクレームをつけるモンスター住民もいるのです。
理事会が、モンスター住民の意見に振り回されてマンション管理会社とのトラブルに発展すれば、いいサービスなど望めなくなるのです。
悪いことは目につきやすく、良いことは目立たないのです。
つまり、マンション管理会社にしっかりとした仕事をしてもらうためには、いくつかポイントがあるのです。
- 「マンション標準管理委託契約書」ならびに「別表」に加えて、管理員の資質に左右されないためのルールを作ること
- マンション管理組合の代表である理事会のメンバーがしっかりと業務をチェックすること
- 工事などを発注する場合は、マンション管理会社経由ではなく複数の業者に見積もりをとること
- 理事会がモンスター住民のクレームに振り回されないこと
- 理事長や役員が報告書をしっかり確認してから、承認印を押すこと(疑問点があれば問いただすこと)
- 約束した期日は、必ず守らせること
このようなことができていない状態で、管理費の値下げ交渉やマンション管理会社の変更などを行っても決して満足できるような結果は期待できません。
マンション管理会社の業務内容をマンション管理組合の代表である理事会が正しく評価し、納得のいくまで説明を受け、問題があれば改善を要求することが大切なのです。