マンション管理組合理事の仕事ぶりを評価する
今回は、マンション管理組合の理事会について解説します。
国土交通省『平成20年度マンション総合調査結果(少しデータが古いのですが・・・)によれば、理事の任期は、1年(65.9%)、2年(30.4%)という結果で、96.3%のマンション管理組合の理事の任期は1年か2年となっています。
理事改選については、全員同時改選(61.9%)、半数改選(23.4%)となっており、85.3%がどちらかの改選方法をとっているという結果です。
理事の選出方法は、立候補又は推薦(21.9%)、抽選又は順番(69.1%)、91%がいづれかの方法で、抽選又は順番が多いことがわかります。
また、理事に対する報酬の支払いは、完成年次と総戸数による調査では、役員全員に支払(17.1%)、理事長のみに支払(1.2%)、支払わない(75.9%)という結果で、完成年次が新しくなるほど「報酬は支払ってない」の割合が高くなる傾向にあり、総戸数規模が大きくなると「報酬は支払う」割合が幾分高くなる傾向があるようです。
つまり、任期は1年、全員同時改選、選出は抽選又は順番(輪番制)、無報酬というのが一般的なマンション管理組合の理事のイメージということになります。
そもそも、マンション管理組合の主な役割は、建物の共有部分の維持管理を行い区分所有者、つまり、管理組合員が快適に暮らせるように、また、資産価値を維持することです。
ただ、マンションの管理組合員である区分所有者全員で、一から十まで議論してすべてを決めるのは現実的ではありませんから、管理組合員の中から理事を選出し、総会で決議された内容を執行してもらうわけです。
簡単に言うと会社の取締役や執行役員のようなものですが、実際には大きな違いがあります。
それは、会社の取締役や執行役員は、それまでに仕事で経験と実績を積み優秀な人が抜擢されるのですが、マンション管理組合の理事は、何の経験も実績もない人が輪番制等で選ばれるのです。
つまり、優秀だから選ばれるのではないわけで、理事のレベルは相当ばらつきがあるのです。
立場も違います。
ローン返済中の人、現金で購入した人、ローンを完済してしまった人。
終の棲家と考えている人、賃貸に出そうと考えている人、売却しようとしている人。
子供がいる人、夫婦だけ、一人暮らしの人。
高齢者や障害者と同居している人、若い夫婦や子供だけの人。
実に様々な人たちが同じマンションにいるわけです。
それぞれ立場の違うために、理事の中で意見の相違が埋まらない場合もあるのです。
たとえば、管理費を下げることを目的として管理会社の変更を検討するとします。
管理費が下がるのであれば賛成という意見と、サービスが低下する恐れがあるのであれば多少管理費が高くでも今のままでいいという意見、管理費が上がってももっといいサービスにしてほしいなど様々な意見が出てくると思います。
また、理事を選任するときに個人の資産状況や専門知識の有無などは調べませんから、もしかすると、理事長や会計担当理事が個人的な借金に苦しんでいて積立金などを使い込む可能性もゼロではないのです。
実際、管理費や積立金などを滞納している人が理事になる場合もあります。
そうした様々な立場や環境の理事の中から理事長や副理事長、監事といった重要な役割を担う人が選ばれるわけですから、マンションの理事会がうまく機能するかどうかは博打のような面もあるのです。
たまたま、建築関係や財務会計の知識や経験のある人が理事にいてうまくいく場合もありますが、それは非常に稀なことで、ほとんどの場合専門知識のない方なのです。
もっと恐ろしいのは、理事長の選出方法が、くじ引きやじゃんけんなど、非常に安易な方法が多いことです。
理事長がどのような立場であるかが理事会の方向性に影響してくるのは避けられませんからくじ引きやじゃんけんなどの選出方法はハイリスクであることは説明するまでもないと思います。
また、理事会が自分たちは偉いと勘違いして、暴走するとひどいことになります。
総会での報告以外の理事の仕事ぶりは理事以外の管理組合員にはわかりにくいですし、関心のない管理組合員が多いのも事実です。
理事会の議事録も都合の悪いことは記載されていないこともあり、どのような議論がなされたかを詳細を知ることは出来ないのです。
つまり、理事会の活動は、ほとんどノーチェックということになるのです。
通常、マンション管理会社に業務委託しているマンションでは、管理会社の担当者が理事会等に出席していると思いますが、理事会が法に触れるような判断をしない限り口をはさむことはありません。
言い換えれば、後々マンション管理会社が責任を追及されるようなこと以外は、可能な限り「事なかれ主義」を貫く場合が多いのです。
ことを荒立てず、翌年もマンション管理契約を継続してもらえるようにすることが彼らの最大の目的だからです。
そのことから、管理会社に理事会をチェックしてもらうのは無理ということになります。
ではどのような方法で、理事会の活動をチェックすればいいのでしょうか?
具体的には、今どのようなことが問題でどのように解決しようとしているのかを説明する住民説明会を定期的に実施するもの一つですし、理事会の時に理事以外の管理組合員が傍聴するなど、理事の仕事ぶりを監視する仕組みが必要になるのです。
総会は、委任状ですべて可決されている場合がほとんどで、理事の任期の最後に行われるために、そこで何を言っても無意味な場合がほとんどです。
特に、大規模修繕の時期に無能な理事会が当たってしまうと、金銭的にも莫大な損出になる可能性もあり、理事会の評価は今後非常に大切なことになると思います。