修繕積立金のペイオフ対策
修繕積立金や管理費は億の単位となることもあり
ペイオフに対する備えはマンション管理組合の重要課題のひとつです。
そこで今回は、ペイオフについて検討してみたいと思います。
ペイオフについては、金融庁の下記ページに出ていますので説明は割愛します。
http://www.fsa.go.jp/policy/payoff/
まず、一般的なぺイオフ対策としては次の3つが考えられます。
(1)金融機関の分散
(2)住宅金融公庫の「マンションすまい・る債」の購入
(3)金融機関を選択
(1)の金融機関を分散する方法は、確かに有効なのですが、
積立金が何億円にもなると難しくなりますので、小規模なマンションに限られます。
(2)の「マンションすまい・る債」の購入も安心で多くのマンション管理組合で活用されているようです。
発行の都度、国の認可を受けていますし、
住宅金融支援機構法により機構の財産から優先的に弁済を受ける権利を有するので
基本的には安心です。
しかし、政府保証があるわけではないので、100%元本割れ等のリスクがないかというとそうでもありません。
(3)の金融機関を選択は、積立金の額に関わらず非常に重要で、
そもそも金融機関が破たんしなければ何の問題もないからです。
これ以外にも、国債を購入するとか、決済用預金に預け替えるなどいろいろと方法はあります。
ペイオフ対策を検討する際に、金利について議論されることがありますが、
そもそもマンションの長期修繕計画は、
積立金の金利がゼロでも成り立つようになっているはずですので、
運用益を求める必要はなくリスクの高い運用をする必要もないのです。
金利がゼロでよければ決済用預金に預けることで、
全額保護されるわけですから何の問題もなくなります。
しかし、何億円もの資金を全く金利ゼロの状態にして置くのは、さすがにもったいない気がします。
そこで、重要なのが金融機関の選択です。
金融機関の信用に関わる情報は、各金融機関のホームページから入手できますし、
直接請求すればデスクロージャー(業務及び財産の状況に関する説明資料)を入手することも可能です。
また、株式会社日本格付研究所という会社が金融法人格付けを行っていて誰でも閲覧できます。
http://www.jcr.co.jp/rat_fina/rat_list.php
下記は、2012年5月8日に株式会社日本格付研究所のサイトで検索した結果の中で
AA-以上の金融機関です。
発行体 | 長期 |
---|---|
商工中金 | AA+ / 安定的 |
日本トラスティ・サービス信託行 | AA+ / 安定的 |
日本マスタートラスト信託銀行 | AA+ / 安定的 |
横浜銀行 | AA / 安定的 |
群馬銀行 | AA / 安定的 |
三菱UFJ信託銀行 | AA / 安定的 |
三菱東京UFJ銀行 | AA / 安定的 |
七十七銀行 | AA / 安定的 |
信金中金 | AA / 安定的 |
三井住友銀行 | AA- / ポジティブ |
ソニー銀行 | AA- / 安定的 |
みずほコーポレート銀行 | AA- / 安定的 |
みずほ銀行 | AA- / 安定的 |
みずほ信託銀行 | AA- / 安定的 |
阿波銀行 | AA- / 安定的 |
三井住友信託銀行 | AA- / 安定的 |
三菱UFJフィナンシャル・グループ | AA- / 安定的 |
山陰合同銀行 | AA- / 安定的 |
野村信託銀行 | AA- / 安定的 |
つまり、倒産リスクの少ない金融機関を選択するのが非常に重要になるわけです。
もう一つ、知っておきたいことに万一のペイオフの場合の名寄せについてです。
預金保険機構の下記のページに「名寄せに際しての預金者の扱い」が明記されています。
http://www.dic.go.jp/shikumi/kaisetsu/kaisetsu2-1.html
つまり、名寄せは、預金者が「個人」、「法人」、「権利能力なき社団・財団」、「任意団体」のどれに該当するかにより扱いが異なります。
一般的なマンション管理組合は、「権利能力なき社団・財団」に該当すると思われますが、
区分所有法47条1項の規定により管理組合法人とした場合には「法人」として扱われます。
「権利能力なき社団・財団」以外の「任意団体」となるマンション管理組合もあるようですが、規約に「組合資産について構成員が共有持分権を有する」旨を明記してある場合など例外的なものと考えられます。
最後に、ペイオフ対策は、マンション管理組合にとって非常に重要な事項ですので、
理事長や理事会の判断で進めるのではなく総会で承認を受けて行う必要があるでしょう。